デモ真っ最中の香港でのかき氷

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2019年10月4日、「緊急状況規則条例(緊急条例)」を適用し、デモ参加者がマスクなどで顔全体を覆うことを禁止する「覆面禁止法」を5日から導入すると表明した。民衆は自由を勝ち取るまで戦い続けることを選び、デモはすでに4か月を超える長期化となっている。デモ隊と香港警察の衝突が激化していく中、わたしが香港に到着する日から新条例の適用が決まり、更なる緊張状態に突入することが予想されていた。

時はさかのぼり、2019年1月、友人のゆいちゃんと、香港に住むかなちんを訪ね、ゆいちゃんが以前演劇のツアースタッフとしてアジアを回り(ドゥアン・ダーオでも公演してくれた大道寺梨乃ちゃんのソロ公演ソーシャルストリップ)、その際お世話になったスタジオtong3に遊びに行った。わたしのイメージの中の香港そのもののあまりにも素敵なスタジオで、オーナーのチャーリーにここでかき氷イベントやりたいと言ったら、いいよといってもらい、とんとんと決まったのだ。

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秋の香港の重陽節のあたりがいいとチャーリーが提案してくれ10月6日7日に決まり、普段の仕事や週末のかき氷ポップアップショップなどをこなしていく中、香港のデモが始まり、かなちんが最新情報をどんどん共有してくれるので、かなりリアルタイムで今回のデモの動きを見続けていた。6月の段階から警察は既に催涙弾を使いはじめていて、どんどんと暴力的になっていく様も見ていた。

9月にかなちんと香港の友人のK君たちが主催の「香港 時代革命-デモを続ける市民のリアルを探る-」@三鷹scoolというイベントで、タピオカミルクティを作り、沢山の香港人と話しをした。かなちん曰く、香港は消費の形が変わってきて、自分の落としたお金の先がどこにいくかを考えて買い物をしている。タピオカ屋は大陸でもお店があるので、どうしても警察支持を表明するお店が多い。嫌だから、タピオカは食べないとのこと。そうだよね、その先のお金の流れを意識することは消費者の義務だなっと目からうろこが落ちた。イベントで会った人たちは、本当に政府に対して怒っているけど、みんなで協力して、シニカルとユーモアを工夫しながら反対の意を唱えていた。

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デモが激化していく中、こんな時にかき氷イベントをしたら不謹慎なんじゃとかなちんに相談すると、デモはすでに日常になっている故、その中で楽しみを見つけながらでないと続けられないと言ってもらい、当初通り行くことを決めた。

10月5日の早朝香港につき、早速かなちんと合流し、地元のお年寄りが集まる安い飲茶屋さんに行くと、昨夜のデモの様子がテレビから流れていた。地下鉄のMTRが全線(空港からの線ですら)運休していたり、中国系の銀行や、スターバックスなど街中いたるところで親中系のお店が襲撃された様が残っていたり、いつもより人も車もずっと少ない香港の街はなんとなく緊張感が漂っていた。(ちなみにスターバックスなど強化ガラスが割られていてオープンな状態でも、中の商品はきちんと棚に陳列されたまま残されていた)

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緊張感などすぐに慣れて楽しく観光して、フルーツマーケットで翌日のイベントの仕込みのためのフルーツやスパイスを買ったりし、tong3でチャーリーと再会し、みんなで夜ご飯を食べに。K君のおすすめの佐敦にある潮州料理の名店「紅伶飯店」(すっごいおいしかったし、広東料理よりもタイ料理に近かった気がする)でもデモの様子がテレビから流れてきて、警察が暴力をふるう映像が流れると、至る所から抗議の声が上がっていた。

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ゆったり飲んだり食べたりしていたら、夜も更け、スタジオまでの大通りではデモが始まっていた。チャーリーがスイーツを食べようというので、今まさに警察とデモ隊の衝突が始まろうとしている大通りを渡り、(警察がいる時は、絶対に走るな、写真を撮るなとのこと)、途中レノンウォール(自由を求める市民の声が貼られた壁)に翌日のかき氷イベントのチラシを貼り、着いたスイーツショップの中には黒ずくめのデモ帰りの若者がスイーツを食べながらおしゃべりをしていた。

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翌日は朝から仕込みのための買い出しで市場やスーパーを歩き回り、午後から仕込み。足りないものをかなちんとK君が買い出しに行ってくれ、一人でシロップ作りをしていると、外からガーンガーンと大きな音がする。ベランダから外を眺めると、目の前の中國銀行がデモ隊に襲われている。はじめは看板の中國の文字を黒く塗り、次はレンガを投げて壊し、その後シャッターを壊し始めた。5分程してシャッターが壊れないからあきらめたのか、一旦デモ隊はみんないなくなる。

その後すぐ、第二陣がきて、あっという間にシャッターがあげられ、強化ガラスが壊され、銀行内に入り、おそらく中のものを壊し、1分程で出てきて、徐々に人が離れ、最後に残った人がシャッターを下ろして全員がその場を離れるまでかかった時間は、15分くらいのことであった。途中でやってきたチャーリーの友人は、離れるときに火をつけるよと言っていたが、その銀行の上は古い住居だったので火はつけなかったみたい。

ずっとベランダから見ていたのだが、襲撃をしている人たちは誰もお金を取るわけでもないし、他の人を気遣いながら行っていたし、襲撃の現場のすぐ隣をデモ帰りのカップルが仲良さそうに歩いているし、なんなら普通のおじさんが犬の散歩をしていた。誰もけがをしないように周囲に注意深く気遣っていて「POLITE」だねとチャーリーの友人と言い合ったりするほど。抗議の方法として過激になっているが、彼らを暴徒とは呼べないなと思ってしまった。

スタジオの前の道にはレンガがまかれ、竹でバリケードが作られ、あやわ最前線になるのかと思われたが、幸いにしてその後何事もなかった。

しかしMTRはまだ運休しており、香港中でデモが行われていて交通網は死んでいた為、友人たちがtong3まで来れない事態に。それでも集まってくれた人たちと、かき氷と、K君が作ってくれたモヒート、参加してくれたネコノコちゃんが持ってきてくれたうまい棒などをゆっくり楽しむ会ができた。

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チャーリーが最後に「難しい時に甘い時間をありがとう」と言ってくれてうれしかった。どんな困難な時でも、生活は続くし、生活を楽しむ気持ちをわたしは学んだよ、ありがとう香港!民衆のみんなが求める未来を願うし、みんなで決めた方法を応援するよ!香港加油

 

🍧🍧🍧🍧🍧今回作ったシロップ🍧🍧🍧🍧🍧

いちじくと花椒紹興酒(ペッパースプレーをイメージ)

パイナップルとアニス(かなちんから聞いたデモの歴史から)

ドラゴンフルーツと生のローゼル(とにかく赤いものを)

白いパッションフルーツ

生のなつめ

MEIJIミルクシロップ

ソーダクリーム(エスプーマ)

 

かなちんが結構デモ感あるシロップだねって言ってた。

🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧🍧

今思うとわざわざチャーリーが重陽節はお酒を飲むといいんだよと教えてくれたのだから、菊のシロップを作ればよかった。けどハイビスカス(ローゼル)のシロップ作ったからいいか。

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お金を貰うわけにはいかないので、物々交換でもらったDINOの絵。大事にするね。

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