ドゥアン・ダーオの2017

今年も色んなことがありました。

おいしいものを食べたり、考えさせられるお芝居を見たり、素晴らしい音楽を聴いたり、本や漫画を読んだり、ゲームをして、お酒を飲んで、友達と喧嘩をしたり。

まぁ個人的な一年としてはいつもとあまり変わらないのですが、ドゥアン・ダーオとしては、たくさんの楽しいことをさせていただきました。

その一部をご紹介しますね!

 

まずは、2017年最初のお仕事はafternoonteaとcat’s issueのコラボ「cat’s nap time」第2弾のスペシャルムービー用にネコ形ケーキを作らせていただきました。cat’s issueのかわいらしい物語の世界がとっても素敵なムービーになっていますよ。

 

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映像も写真も見つからなかった……

 

夏には、同じくcat’s issueのアーカイブ展(かわいいネコのグッズばかり!)でネコのかき氷のポップアップショップや、

 

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昨年に引き続き横浜のコワーキングスペースBUKATSU-DOでかき氷のワークショップをさせてもらいました。

 

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スパイスとハーブを使った特製フルーツシロップを作り、業務用かき氷機を使って自分でかき氷を作る体験は、毎回大好評。スペインでかき氷屋さんを開く予定のシェフの方も参加してくれました。

 

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2016年に府中のuma et merdereで開催したドゥアン・ダーオのトムヤムクン展をまとめた「ドゥアン・ダーオのトムヤムクン」の発売を記念して、(ここから買えます、買って。https://bccks.jp/bcck/146060/info)ドゥアン・ダーオのトムヤムクン展vol.2を渋谷の大人のサロンLi-poで1日だけのイベントも。

 

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昨年に引き続きアーティストたちのトムヤムクンをテーマにした作品を展示したり、トムヤムクンの歌を歌ってもらったり、ワークショップがあったり、盛りだくさんのイベントでしたよ。あー楽しかった。渋谷のラジオにも出ちゃいました。くわしくはこちらhttp://duang-daao.com/news/?p=466

 

秋には、タイのアーティスト、ピシタクン・クアンターレンクのバンコクでのインスタレーションに参加しましたよ。

 

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絵と光と音によってデコレーションしたフードカートで町中を練り歩き、アイシングしたクッキーを売るという移動式の作品で、フードカート文化が発達したバンコクならではのポップな面白さでした。彼の作品はパンクで刺激的でとても風刺が効いていてすごいんです。

 

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かわいいお客様♡

 

10月にはシンガーのMomokoMotionと一緒にsoi kitchenというケータリングユニットを組んで、tokyo art book fairでガイヤ―ンの屋台販売をしました。連日満員御礼で、150食が2時間で売り切れたり……リピーターさんがたくさんいたり……本当ありがたかった。Momokoさんは歌も歌詞も素晴らしいけど、お料理もすごいんです。

 

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MomokoさんとはソムタムのZINEも作りましたよ。歴史や作り方のコツ、ソムタム事情などソムタムにまつわることだけで8000文字のかなりの読み応えです。まだ在庫あるので、欲しい方はお声かけくださいね~。

 

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それから今年もたくさんケータリングのお声かけいただきました。

イラストレーターのせきやゆりえちゃんの展示のレセプション(神々しいキラキラの女の子の絵がかわいい)や、

 

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イラストレーターのmiccaちゃん主宰のなつまつり(墨を使ったクールビューティな女の子たちの絵が素晴らしかった)や、

 

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おしゃれなお宅でのクリスマスケータリングや、

 

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色んな所で色んなことをさせてもらって、全部楽しかったです♡

ありがとうございます。

 

他にも、ドゥアン・ダーオのシュトーレン部で今年も14キロ仕込んだり、

 

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鶏を絞めたり、

 

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燻製をしたり、

 

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アイシングクッキーを4歳の子たちと作ったり、

 

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いろんな楽しい食のことをしましたよ。

2018年もたくさん楽しいことしたいな~。

なにかあればお声かけくださいね~。

 

では良いお年を~!

 

タイで鶏を絞める

東京の普通の環境で育った。たぶんかなり食に恵まれて生きてきている。贅沢をし、好き嫌いをし、時に食べ散らかし食べ残し、美味しい食べ物に囲まれてきた。

洋菓子の専門学校に行き、食品メーカーの研究所で働いたあたりから、食べ物を捨てることにあまり躊躇がなくなってしまった。もちろん心が痛まないわけではないが、わたしが担当していた業務用の研究では工場で作るデザートの試作などとても食べきることができない量を作ることが必須だったわけで、美味しく食べられるものを捨てることに慣れてしまった。友達のお父さんの畑を手伝わせてもらったときにも、傷んだ野菜はどんどん捨ててしまえという農家ルールにあっという間に馴染んでしまった。こんなにも簡単にも慣れてしまう自分の適応力に愕然とする。

タイ料理のカフェを閉じてから、なんとなくイベントをすることになり、タイ料理を通じたコミュニケーションをテーマにしたイベントをしたくて、トムヤムクン、ソムタムについて、歴史やレシピ、人のもっているイメージなど様々なことを調べているのだけれど、次にガイヤ―ン(タイの焼き鳥)を調べたいなぁと考えた。

タイで有名なお店でガイヤーンを頼むと、だいたい丸焼きされたものだ。生き物感がかなり強いビジュアルで、食べると身が引き締まっていて元気に動き回っていた生前の姿が容易に想像できる。

ガイヤーンを調べるならばどうしても、鶏自体を考えることは避けられないと思った。鶏を絞めること、やってみたいなと。

インターネットで調べると色々なサイトが見つかる。絞め方や体験談などどれも鶏=命を重々しく扱っているページばかり。そうか、そういうことなんだろうなと思った。

日本で鶏を絞めるのは、場所や生きた鶏を手に入れること、絞め方を知っている人の手配など、用意が大変そうなので、バンコクの友達に相談し、市場で交渉するよと言ってくれたので、旅行中にチャレンジすることにした。

 

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場所は、バンコクの日本人街からもタクシーで10分ほどのところにあるクロントゥーイ市場。ここは24時間営業していて、レストランをやっている人たちも買い出しによく来るとても大きな市場だ。いつも買い物客で賑わっている。バンコクに住んでいた頃、夜遊びをした帰り道にタクシーの中から生きた鶏を運び出している姿を見かけたりもした。

 

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写真を撮ってもらおうと、タイ人の友達カップル以外に3人の日本人に声をかけ、計6人と大所帯となった。鶏を絞めた後は、友達のスタジオのテラスでバーベキューパーティをそのまましようと、貝や野菜やタイソーセージなんかを買いつつ、市場の一角に向かう。

 

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途中、建物の外、屋根もないところにテーブルを出し肉の処理作業をしているお姉さんたちに写真を撮らせてもらったりもした。

 

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生きた鶏がいる場所は、市場の一番端。作業場となっている一画で、にぎやかな人通りも少しずつ減り、その分鶏の鳴き声が聞こえてくる。鶏たちは元気で、かごに閉じ込められている。

 

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これからわたしがこの中のどれかを絞めるのだと考えている間、友人が話をつけてくれ(ものの10秒)、kgあたり70バーツと手数料40バーツでいいよと言われた。きっと慣れているんだろう。

鶏の鳴き声を聞いてしまい、びびったわたしは、店先にいる大きな鶏ではなく、奥の方の人目にあまり触れないところのかごの中の一番小さな鶏にしてくれとお願いした。2キロ、合計180バーツ約800円弱で鶏を絞めるという体験を買うことになった。安い。

絞めるところを撮影してもらおうと、カメラ担当を3人も呼んだのに、タイループメダイ(写真ダメ)と言われ、みんなすごすご引き下がる。なんのために呼んだのかわからない。

店の奥に入ると、鶏の頭と足を2人の男の人が持っていて、ナイフを渡され、首を切れとジェスチャーで言われる。その先には3人の男がわたしをにやにやと見ていた。

 

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白いワンピースを着てきたわたしは、返り血を浴びないかなどいくつか聞いたけれど、無視される。一回首にナイフを添えたけれど、躊躇してしまい離しまった。男たちは思いっきりため息となんやかんやと悪態をつき、足を持っていた男が呆れながら次の人に変わった。あぁこの人たちは仕事で毎日鶏を絞めていて、怖いなどというリアクションは失礼なんだと気づき、その次はえぃと首にナイフを入れた。

 

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ポタポタと申し訳程度に血が数適床に落ちるのを見ていたら、あっという間に鶏は空の鍋の中に運ばれた。何をしているのかわからなかったが、少し経った後にもう一度首の血管を切って逆さにしているところを見て、血を抜いているのだとわかった。そしてわたしのナイフでは致命傷にならなかったんだな、苦しませて申し訳ないなと思った。

そして湯だった大鍋に入れられる。ネットで見た毛穴を開かせて羽をむしりやすくするという工程だとすぐに理解した。その頃には少し冷静になって(ずっと冷静ではいたけれど)周りを見回すと友人がだれもいない。店の外にいたので、少し感想を言いに一度外に出る。

すぐに戻ると、今度は鶏が大きな丸い銀色の機械に入れられていた。大きな洗濯機みたいなもので、毛穴を開かせた鶏を入れると遠心分離で羽がむしられるというわけだ。

 

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1分程で丸裸にされた鶏は、内臓を抜かれ、あっという間にオーダー通りの4等分になってビニール袋に入れられて、わたしの手元に。

わたしが躊躇する時間を除けば、5分もかからない見事なスピード技だった。

一人の友達は遠くからこっそり写真撮影をしてくれるためにちょくちょく店の奥に来ていたが、他のみんなはほとんど外にいて、その理由を聞いたら匂いがすごいからとのことだった。集中していたからか、わたしは一切匂いに気づかなかった。躊躇はしたものの、インターネットで見たような命なんだとかそういう感動や重さは特になかったし、友達たちにもなさそうだった。こういうもんなんだとすんなり受け入れられてしまった。次に絞める機会があったら、苦しませないであげたいから躊躇なくもっと上手にナイフを入れてあげたいとは思う。

 

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友達のスタジオに持って帰り、炭を起こし、下味をつけてバーベキューにする。顔もついたままじっくりと焼く。生の時には閉じていた目は、焼いている途中で少し開き、水晶のような瞳でじっとこちらを見つめ、そして焼ける頃には白く濁り何も見えていないただの皮膚のようになっていた。ゆっくりと目が開いた時は、まだ意思を持っているように感じられ少し緊張した。

焼きあがった肉はぷりぷりで美味しく(タイの鶏肉は放し飼いで育てられるらしくもともと美味しい)、みんなで分け合って食べた。とても楽しいパーティーだった。ホームパーティーが終わった後には、まだ頭と数か所が残っていた。

トムヤムクンのレシピブックを作りました。

食べるだけがレシピ本じゃない!
日本初のトムヤムクンだけのレシピブックが登場

トムヤムクンってなんだろう?
16世紀アユタヤ王朝時代に作られたタイ風ブイヤベース?
タイ人にとって味噌汁?直訳すると「煮る」「混ぜる」「エビ」!?
ドゥアン・ダーオがたくさんの人たちと考えました。
どんなトムヤムクンが出来上がったのでしょうか?

<一緒に考えてくれた人たち>
井出佳美/犬力/鍵っ子/カズモトトモミ/鴨美雪/北川陽子(FAIFAI)/清 綿子/SUNDIY/須川まきこ/THIS IS MY FRAME/なかはら・ももた/NEKONOKO/Pantid Daungneth /前田はんきち/MUZINA/山本ゆい

 

 

友達のお父さん

友達のお父さんが亡くなった。

ここ数年会っていなかったが、以前は元農家のお父さんのやっている本格的で大規模な家庭菜園の手伝いによく行かせてもらっていた。そのたびに、娘曰く人付き合いがあまり得意でなく、まじめなお父さんに、その当時は今よりもっと素直にふるまえていたもちまえの図々しさで、野菜のことやその土地の話、友人の家族や昔話などたくさん聞いたものだった。春にはお茶の葉を刈り(ただ刈るだけだし、素人仕事でへたすぎて周りの完璧な畑と比べて恥ずかしいと言われ)、梅雨には庭になる梅をもいで(梯子でフラフラになったり、木を折ったりしながら)、夏にはたくさんの野菜を収穫し(お父さんが手入れしてくれた野菜をただ収穫するだけ)、秋の花を見、冬には薪で米を蒸し木の臼で餅をつき(なってないと言われ)、そんな農家の生活体験を少しさせてもらった。数十年前ごぼう畑を掘っていたら縄文土器の一部がでてきた話や、所有している山の土を湾岸地区の埋め立てのために売った話とか、新宿から1時間ほどで行ける場所なのにまだイノシシがいたり、親戚に畑を貸したらどんどん浸食されていったり、冗談みたいな話をたくさんしてくれた。

タイに住んでいる一年間どうしても処分できなかった本と食器を保管してもらっていた蔵からは、十数年前の自家製の素材を加工したお茶やゴマやウコン、数年前に亡くなったお母さんが作ったイチゴのジャムが発掘されたり、時空を超えた体験をたくさんさせてもらった。

お父さんはわたしたちが遊びにくることを、とっても楽しみにしてくれていたそうだ。近所との交流は数年前に亡くなったお母さんが主にやっていて、シャイなお父さんは必要以上には人と交流をしなかったらしいう。図々しいわたしが、「おとーさーーーーん」と遠くから叫ぶのを、友人の妹の小さな孫の姿と重なって親しみを感じてくれたのかもしれない。不義理にも遊びに行かなくなってしまった数年は、3人姉弟の孫たちや娘たちが体を悪くしたお父さんをよく訪れていたそうだ。よかったなと思う。心臓が悪いけれど、自分と娘、孫たち(プラスわたしたち)が食べる季節の野菜を作って、庭の昔からある果物や花の木の手入れをして、先祖やご近所の行事をして、夜は少しのお酒を飲んで寝る。目の前の日々のことを一つ一つまじめにこなし、多くを望まず、そんなに多くない大事なものをぎゅっと大事にしている人にわたしには見えた。刺激ばかりを追い求めているわたしにとっては、実直で素朴なことがどんなに素晴らしいかと、お父さんが気づかせてくれた。日々の生活や、すぐ近くの自然、季節の移り変わりの中にどれだけたくさんの刺激があるのか……。忙しい日常の中だとついつい見逃してしまうことばかりだが、それらの刺激はとても毎日を豊かにしてくれるなぁと。

いつもしてもらってばかりだったけれど、何度かご飯を作って一緒に食べたりもした。お父さんが作ってくれた採れたての白菜を使って豚バラと挟んで蒸すだけと、簡単で素材頼りのメニュー。とても美味しかった。たぶんこれからこの白菜と豚バラのミルフィーユ蒸しを作るときには、お父さんのことを思い出すと思う。

ご冥福をお祈りしています。

 

 

〈白菜と豚バラのミルフィーユ蒸し〉

①縦に1/8割した白菜の葉を一枚一枚ばらばらにする。

②白菜の葉と豚バラ肉を交互に重ねて、鍋の深さに合わせ包丁でカットする。

③鍋に②を詰めて蓋をして火にかける。白菜からでてくる水分で蒸し煮にできる。

④火が通ったらポン酢やゴマだれをつけて食べる。

 

 

 

 

踊るタコが食べたい

たまたま見つけてしまった旅行会社のメールマガジン。ソウル2泊3日のツアー、税金込みで2万円以下。とってもやすい……。気づいたら友人を誘って、次の月の予約をしていた。
ソウルに行くのはこれで4回目だ。最後に行ったのは4年前。そんなにもともと詳しいわけではないけれど、土地勘もお金の感覚もすっかり忘れてしまっている。前回までの韓国旅行は、毎回食に対するポテンシャルがとても強い子たちと一緒だったので、韓国グルメ耐久食い倒れレースみたいであった。初めての時はそれにプラスして浴びるようにお酒を飲んで、終電を逃す失態もした。たまたま出発時に空港まで送ってもらった友人がビデオをくれて、酔っ払ってその様子を撮影していたのだが、恐怖で結局一度も見返すことができないままそのビデオは処分した。
旅を始めたころは買い物もカフェ巡りもあれもこれもとギュッとつめこんで、お腹の中も、頭の中もいろんなものでぎゅうぎゅうになって帰ってきていた。バタバタと移動して、食べて、予定をつめて、とても疲れて、かといって、記憶もいっぱいすぎて思い出そうとしてもうまく整理ができいなくて思い出せなかったり混乱したり。いまは外国が身近になり、前よりも少し旅慣れて、ちょっぴりだけ大人になり、あまり予定を組みすぎないということをしている。寄り道をしたり、気になった人と話をしたり、そこに暮らす人たちの生活の片鱗や、特別なものを見つけられたり、前よりもずっと記憶に残るようになった。
特に目的もなく旅立つことを決めたけれど、やっぱりそれなりに楽しみでソウルの街をガイドしているサイトをみて、ひとつだけやりたいことを決めた。それは「踊るタコを食べること」。「踊るタコ」すなわち生きたままのタコを、生きたまま食べる。タコが口の中で舌を舞台に踊るという、なんともエキサイティングな食べ物だ。
ソウルについたらもう夜になっていた。空港から市内への移動中、観光ガイドのサイトからレストランを探す。宿泊するホテルに近く、なおかつ「踊るタコ」が食べられるレストランを探して、チェックインもせずそのまま向かう。お店は、大通りを少し奥に入ったところにあった。店舗の前のスペースにテントを建て客席が拡張してある居酒屋であった。その赤いテントの中に案内されると、隣にはジンロの瓶を何本も明けて、キャッキャと話している地元のOLらしき女の子たちのテーブル。女の子が集まるとにぎやかでかわいらしいのはどこでも変わらない。
わたしたちも負けじとキャッキャいいながら写真入りのメニューを覗く。タコとビール、そしてサンマの焼いたもの、メニューを指さしながら注文した。料理は待つこともせず、すぐにわたしたちのテーブルに運ばれてくる。目的のタコは、大きなお皿に、大きな貝とホヤ、野菜でたっぷりと盛り付けられている。目的のタコは、豪快にぶつ切りにされた足が皿の中央に鎮座している。イイダコの細い足は、うねうねと動き、赤とか青みがかったグレー、なんとなくぬらっとしていて……ナメクジに似ている……気持ち悪い……。
勇気を出してひとつ箸でつまみ、口に運んでみる。唇にぴしぴしと足があたり、無理やり口の中に入れると、にょろにょろと舌の上を動き、口の中のいたるところに小さな吸盤が吸いつく。慣れてくるとその動きと新鮮だからこそのコリコリとした食感が楽しい。しかし生臭い。なんとなく注文してすぐに来たし、ぬめりが怪しいと思っていたが、案の定処理が甘そうである。一緒に運ばれてきた小皿の中のごま油と塩をたっぷりつけて食べる。生臭さがごま油の風味で少し消される。とはいえ、大きなお皿いっぱいにタコや貝がのっている。ホヤや貝も少し生臭く、ちょっと辟易しながら、サンマの塩焼きをはしやすめに食べ進めた。わかりやすく生きているということの目の前にいるのに、味や量に対する不平を言うなんて、わたしは業が深いなぁと思いつつ……。

 

 

〈生ダコときゅうりの和え物〉

①生ダコときゅうりを好みの大きさに切る。

②ごま油と塩で和える。

③ネギや唐辛子をトッピングしても良い。

 

日本の生タコは臭みがなくてよい。

 

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