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踊るタコが食べたい

たまたま見つけてしまった旅行会社のメールマガジン。ソウル2泊3日のツアー、税金込みで2万円以下。とってもやすい……。気づいたら友人を誘って、次の月の予約をしていた。
ソウルに行くのはこれで4回目だ。最後に行ったのは4年前。そんなにもともと詳しいわけではないけれど、土地勘もお金の感覚もすっかり忘れてしまっている。前回までの韓国旅行は、毎回食に対するポテンシャルがとても強い子たちと一緒だったので、韓国グルメ耐久食い倒れレースみたいであった。初めての時はそれにプラスして浴びるようにお酒を飲んで、終電を逃す失態もした。たまたま出発時に空港まで送ってもらった友人がビデオをくれて、酔っ払ってその様子を撮影していたのだが、恐怖で結局一度も見返すことができないままそのビデオは処分した。
旅を始めたころは買い物もカフェ巡りもあれもこれもとギュッとつめこんで、お腹の中も、頭の中もいろんなものでぎゅうぎゅうになって帰ってきていた。バタバタと移動して、食べて、予定をつめて、とても疲れて、かといって、記憶もいっぱいすぎて思い出そうとしてもうまく整理ができいなくて思い出せなかったり混乱したり。いまは外国が身近になり、前よりも少し旅慣れて、ちょっぴりだけ大人になり、あまり予定を組みすぎないということをしている。寄り道をしたり、気になった人と話をしたり、そこに暮らす人たちの生活の片鱗や、特別なものを見つけられたり、前よりもずっと記憶に残るようになった。
特に目的もなく旅立つことを決めたけれど、やっぱりそれなりに楽しみでソウルの街をガイドしているサイトをみて、ひとつだけやりたいことを決めた。それは「踊るタコを食べること」。「踊るタコ」すなわち生きたままのタコを、生きたまま食べる。タコが口の中で舌を舞台に踊るという、なんともエキサイティングな食べ物だ。
ソウルについたらもう夜になっていた。空港から市内への移動中、観光ガイドのサイトからレストランを探す。宿泊するホテルに近く、なおかつ「踊るタコ」が食べられるレストランを探して、チェックインもせずそのまま向かう。お店は、大通りを少し奥に入ったところにあった。店舗の前のスペースにテントを建て客席が拡張してある居酒屋であった。その赤いテントの中に案内されると、隣にはジンロの瓶を何本も明けて、キャッキャと話している地元のOLらしき女の子たちのテーブル。女の子が集まるとにぎやかでかわいらしいのはどこでも変わらない。
わたしたちも負けじとキャッキャいいながら写真入りのメニューを覗く。タコとビール、そしてサンマの焼いたもの、メニューを指さしながら注文した。料理は待つこともせず、すぐにわたしたちのテーブルに運ばれてくる。目的のタコは、大きなお皿に、大きな貝とホヤ、野菜でたっぷりと盛り付けられている。目的のタコは、豪快にぶつ切りにされた足が皿の中央に鎮座している。イイダコの細い足は、うねうねと動き、赤とか青みがかったグレー、なんとなくぬらっとしていて……ナメクジに似ている……見るからに気持ち悪い。
勇気を出してひとつ箸でつまみ、口に運んでみる。唇にぴしぴしと足があたり、無理やり口の中に入れると、にょろにょろと舌の上を動き、口の中のいたるところに小さな吸盤が吸いつく。慣れてくるとその動きと新線だからこそのコリコリとした食感が楽しい。しかし生臭い。なんとなく注文してすぐに来たし、ぬめりが怪しいと思っていたが、案の定処理が甘そうである。一緒に運ばれてきたごま油と塩の手皿にたっぷりつけて食べる。生臭さがごま油の風味で少し消される。とはいえ、大きなお皿いっぱいにタコや貝がのっている。ホヤや貝も少し生臭く、ちょっと辟易しながら、サンマの塩焼きをはしやすめに食べ進めた。
「生」というものをそのまま頂く体験をしつつ、味や量に対する不平を言うなんて、わたしはなんて業が深いのだろう。

 

 

〈生ダコときゅうりの和え物〉

①生ダコときゅうりを好みの大きさに切る。

②ごま油と塩で和える。

③ネギや唐辛子をトッピングしても良い。

 

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